マーカスさんは、$29.99の犬用ハーネスを販売しています。3週間でACoSが24%から41%に跳ね上がったため、多くのセラーがやることをそのまま実行しました。すべての入札額を30%下げたのです。2週間後、ACoSは29%まで下がりました。ところが広告売上は半分以下に落ち込み、ハーネスは主力キーワードの検索結果1ページ目でじりじりと順位を落としていきました。
問題は最初から入札額ではありませんでした。競合が$6安い価格を打ち出し、コンバージョン率が12%から7%に落ちていたのです。マーカスさんは数字だけを直すためにコストを払い、原因のほうは放置されたままでした。
ACoSが高いのはなぜかと悩んでいるなら、答えが「入札額が高すぎるから」だけで終わることはまずありません。高いACoSは症状であり、原因の候補は限られています。そして原因ごとに対処法は異なります。このガイドでは、あらゆる原因を3つに切り分ける公式、最初に除外すべきデータの落とし穴、そして今日すぐに実行できる20分間の診断手順を解説します。
ACoSが高い原因をすべて説明できる公式
AmazonはACoSを「広告費 ÷ 広告売上」と定義しています。この式でわかるのは結果だけで、理由まではわかりません。もう一段分解すると、理由が見えてきます。
ACoS = CPC ÷(価格 × コンバージョン率)
広告費はクリック数 × CPC、売上はクリック数 × コンバージョン率 × 価格です。クリック数は打ち消し合うので、残る要素は3つだけ。ACoSが高い原因は、必ずこのどれか、またはその組み合わせです。
$30の商品、CPC $1.00、コンバージョン率10%のケースで、各要素が動くとどうなるかを見てみましょう。
| シナリオ | CPC | 価格 | コンバージョン率 | ACoS |
|---|---|---|---|---|
| 基準 | $1.00 | $30 | 10% | 33.3% |
| CPCが30%上昇 | $1.30 | $30 | 10% | 43.3% |
| コンバージョン率が30%低下 | $1.00 | $30 | 7% | 47.6% |
| 価格が20%低下 | $1.00 | $24 | 10% | 41.7% |
2行目と3行目に注目してください。同じ30%の変動でも、CPCよりコンバージョン率のほうがダメージは大きくなります。入札額を下げても期待外れに終わりやすいのはこのためです。動いてすらいないかもしれない要素に手を付けているわけです。
診断の前に:そのACoSは本当に高いのか
5分で終わる3つのチェックで、壊れていないものを直してしまう失敗を防げます。
フォーラムの数字ではなく、損益分岐点と比べる
同じACoS 35%でも、広告費を引く前の利益率が42%の商品なら健全で、13%の商品なら大惨事です。価格から製造原価、送料、Amazonの手数料を引き、残った金額を価格で割ってください。$30の商品で原価が$7、手数料が$10.50なら残りは$12.50なので、損益分岐点ACoSは41.7%です。
「高すぎる」とは、他人の数字より高いことではなく、自分の目標より高いことです。カテゴリや目的に応じた目標の決め方は、適正なACoSの目安を解説したガイドをご覧ください。
アトリビューションの遅れを除外する
セラーアカウントの場合、Sponsored Productsはクリック後7日間、Sponsored BrandsとSponsored Displayは14日間の注文を広告の成果として計上します。クリックはすぐに反映されますが、注文は少しずつ遅れて入ってきます。そのため直近の2〜3日は、最終的な数字よりほぼ確実に悪く見えます。
今日までの期間でACoSを判断するのは禁物です。期間の終わりを4日前にして、もう一度確認しましょう。
クリック数が足りているか確かめる
コンバージョン率10%の商品なら、15クリックで注文0件のキーワードからわかることはほとんどありません。注文0件に意味が出てくるのは、およそ「3 ÷ コンバージョン率」回、この例なら30クリックを超えてからです。小さなキーワードは、1件の注文で売上ゼロからACoS 90%に変わることもあります。小さなキーワードはまとめて、大きなキーワードは個別に判断しましょう。
どの要素が動いたのかを突き止める
数字が本物なら、悪い期間を直近の良かった期間と比べます。広告レポートから同じ長さの期間を取り出し、CPC(広告費 ÷ クリック数)、コンバージョン率(注文数 ÷ クリック数)、平均注文単価(売上 ÷ 注文数)を計算してください。
| 指標 | 9月 | 10月 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 広告費 | $1,800 | $2,640 | +47% |
| クリック数 | 2,000 | 2,400 | +20% |
| 注文数 | 200 | 192 | -4% |
| 広告売上 | $6,000 | $5,760 | -4% |
| CPC | $0.90 | $1.10 | +22% |
| コンバージョン率 | 10% | 8% | -20% |
| 平均注文単価 | $30 | $30 | 0% |
| ACoS | 30% | 45.8% | +53% |
これで使える情報が手に入りました。価格は無関係です。CPCとコンバージョン率がほぼ同じ幅で悪化しているので、このセラーには2つの対策が必要で、一律の入札額カットでは片方にしか効きません。
次に、商品別に分解します。ASINごとに同じ表を作ってください。アカウント全体の平均には、たった1つの原因が隠れていることがあります。
トムさんは6商品全体のACoSが38%で、すべての入札額を下げようとしていました。ところが5商品は広告費$3,000、売上$12,000で、ACoSは25%。残る1商品は新発売で、広告費$2,700、売上$3,000、ACoSは90%でした。5商品に問題はなく、新商品もローンチ期の商品として普通の動きをしていただけです。6商品すべてを下げていたら、問題ですらない数字のために売れ筋を傷つけるところでした。
原因1:CPCが高すぎる
CPCが動いていてコンバージョン率が変わっていないなら、同じクリックに以前より高いお金を払っていることになります。よくある理由は次のとおりです。
入札額が計算上の上限を超えている
許容できるCPCの上限は価格 × コンバージョン率 × 目標ACoSです。$30、10%、目標25%なら$0.75。もし$1.10払っているなら、他の何かを変えない限り目標には届きません。多くのアカウントには、ローンチ時に設定した入札額やAmazonの推奨入札額をそのまま使った入札額が残っていて、この数字と照らし合わせて見直されないままになっています。マッチタイプ別の設定方法は入札戦略ガイドで解説しています。
プレースメント調整と動的入札が積み重なっている
これは意外と見落とされます。入札額$1.00に検索結果トップの+50%調整をかけると$1.50になり、さらに「動的入札(アップ&ダウン)」で最大100%上乗せされるため、Amazonはそのプレースメントで最大$3.00まで入札できます。キーワードの入札額は問題なく見えても、実際のCPCはそうではないわけです。
プレースメントレポートを確認してください。検索結果トップのACoSが他のプレースメントより大幅に高いなら、基本の入札額に手を付ける前に調整率を下げましょう。詳しい手順はプレースメントガイドにまとめています。
広告費が高くて範囲の広いキーワードに流れている
ビッグキーワードは単価が高いうえに、具体的なキーワードよりコンバージョンしにくい傾向があります。"dog harness"(犬用ハーネス)が、いつの間にか"no pull dog harness for large dogs"(大型犬用の引っ張り防止ハーネス)から予算を奪っていれば、入札額を一切変えなくても平均CPCは上がります。どこにお金が流れたのかを見るには、検索用語をクリック数ではなく広告費で並べ替えてください。
市場全体の単価が上がった
競合の増加や繁忙期は、カテゴリ全体のCPCを押し上げます。典型的なのが11月で、今月のCPC上昇はあなたのアカウントとは何の関係もないかもしれません。日々の数字に一喜一憂するのではなく、繁忙期にどこまでACoSの上昇を許容するかを事前に決めておきましょう。詳しくはQ4のPPC戦略ガイドで解説しています。
原因2:コンバージョン率が低すぎる
これは最も多い原因であり、最も誤診されやすい原因でもあります。症状は広告コンソールに現れるのに、解決策は商品ページにあることが多いからです。
原因を2つに切り分けるテスト
Business Reports(ビジネスレポート)を開き、該当ASINのUnit Session Percentage(ユニットセッション率)を確認します。同じ期間の広告のコンバージョン率と比べてください。2つの指標はカウントの対象が異なるので大まかな比較にはなりますが、見るべきは変化の方向です。
- 両方とも下がった場合:商品ページかオファーに何らかの変化がありました。広告はそれを映しているだけです。
- 広告のコンバージョン率だけが下がった場合:商品ページに問題はなく、広告が的外れなトラフィックを買っています。
トラフィックが原因の場合
定番の原因は、クリックは集まるのに注文につながらない検索用語です。多くはオートキャンペーンと部分一致キャンペーンから発生しています。
エレナさんはキッチン用品に月$3,000の広告費をかけ、広告売上は$7,500、ACoSは40%でした。検索用語レポートを見ると、十分なクリックがあるのに注文0件の検索用語に$600が流れていました。これらを除外キーワードに追加したところ、売上は変わらず広告費は$2,400に。入札額に一切触れず、売上を1件も失わずに、ACoSは32%まで下がりました。
エレナさんのケースは最も理想的なパターンです。対策にほとんどコストがかからず、リスクもほぼありません。コンバージョンしている検索用語を止めずに進める方法は、除外キーワードガイドで解説しています。プレースメントも確認しましょう。商品ページからのクリックと検索結果トップからのクリックではコンバージョンが違うことが多く、弱い商品ターゲティングがキャンペーン全体の足を引っ張ることもあります。
商品ページやオファーが原因の場合
全体的にコンバージョンが下がっているなら、何が変わったのかを探します。次の順番で確認してください。最初のほうの項目ほど原因になりやすく、短時間で確かめられます。
- 競合と比べた価格。買い物客の立場で主力キーワードを検索してみましょう。$6安い新しい競合やクーポンバッジ付きの競合が現れると、自社側で何も変えていなくてもコンバージョンを奪われます。マーカスさんの問題はこれでした。
- Featured Offerと在庫。Buy Boxの喪失、在庫が少なくなったバリエーション、お届け日の遅れは、どれもすぐにコンバージョンに響きます。
- 評価と最近のレビュー。星4.3から3.9への低下や、上部に固定された低評価レビューは、一夜にして大きなダメージを与えることがあります。ローンチ直後の場合はレビューがない状態でのPPC運用をご覧ください。
- 商品ページの変更。メイン画像の変更、A+モジュールの非表示、タイトルの書き換えがないかを確認します。自分で変えた場合だけでなく、Amazon側で変更されることもあります。
- 季節的な需要。時期によっては、見るだけで買わない買い物客が増えます。ギフト商品は、ホリデーシーズンの前と後で動きが変わることもよくあります。
クリックは十分あるのに注文がほぼゼロなら、クリックはあるのに売れないときのガイドでこの原因をさらに掘り下げています。
原因3:価格や注文単価が低すぎる
公式の分母には価格が入っています。そのため、注文あたりの売上を減らす要因があれば、広告がどれだけうまく機能していてもACoSは上がります。
次の3つを確認してください。
- 値引き。20%の値下げは注文あたりの売上を20%減らすので、それを補えるだけコンバージョンが改善しない限り、ACoSは25%上昇します。割に合う判断である場合もあります。ただ、キャンペーンの問題と取り違えないようにしてください。
- バリエーションの売れ方。安いサイズや色に注文が集まりはじめると、広告は同じに見えても平均注文単価は下がります。
- そもそも低価格の商品。$12.99でコンバージョン率12%の場合、$0.80という控えめなCPCでもACoSは51%になります。入札額の調整だけでは解決できません。実際に効く方法は低価格商品のPPCガイドをご覧ください。
20分でできるACoS診断
ACoSが高すぎると感じたら、いつでもこの手順を実行してください。順番どおりに進め、原因が見つかったらそこで止めます。
- 期間を決める(1分)。4日前を終点に、14日間または30日間を選びます。直近の良かった期間からも同じ長さを取り出します。
- 損益分岐点と比べる(2分)。目標を下回っているなら、ここで終了です。
- 動いた要素を見つける(5分)。両方の期間について、CPC、コンバージョン率、注文単価を計算します。
- ASIN別に分ける(3分)。原因となっている商品を特定し、ローンチ中の商品は平均から除きます。
- キャンペーンタイプ別に分ける(2分)。オート、部分一致、完全一致、商品ターゲティングでは、見えてくる状況がまったく違うことがよくあります。
- 動いた要素を追う(5分)。CPCなら、入札額を上限CPCと比べ、プレースメントレポートを確認します。コンバージョンなら、Unit Session Percentageを比べたうえで検索用語か商品ページを確認します。注文単価なら、クーポンとバリエーションの売れ方を確認します。
- 変更点を1つ書き留める(2分)。変更を実行して日付を記録し、少なくとも1週間は評価しないでください。
最初に直すべきこと
原因が複数見つかった場合は、通常この順番が最も低リスクで早く成果につながります。
- 商品ページとオファーの問題。コンバージョン率が上がれば、買っているすべてのクリックの効率が上がるので、これほど広く効く対策はありません。なかでもBuy Boxの喪失と在庫の問題は最優先です。
- 無駄な検索用語。除外キーワードは、売上にほとんど影響を与えずに広告費を削れます。
- プレースメント調整。成果が出ていない検索結果トップの調整率を下げるのは、影響範囲の限られた変更です。
- 個別の入札額。広告費が多くACoSも高いターゲットを、一気にではなく10〜20%ずつ上限CPCに近づけていきます。
- 構成。実績のある検索用語を完全一致に移し、部分一致の高い単価を払わなくて済むようにします。原因がわかったあとの施策一覧はACoSを下げる方法のガイドに、キャンペーン設定についてはAmazonのSponsored Productsベストプラクティスにまとまっています。
作業中は次のことを避けてください。
- すべての入札額を同じ割合で下げる。売れていないものと同じだけ、売れ筋にもペナルティを与えてしまいます。
- 1日に5つのことを変える。アトリビューション期間が7日あるので、どれが効いたのかわからなくなります。
- クリック数のしきい値に達していないキーワードを停止する。サンプルが少ないデータは当てになりません。
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ACoSが高くても問題ないケース
高い数字のすべてを直す必要はありません。次の3つのケースでは、高いACoSが正しい選択になることがあります。
- 新商品のローンチ。最初の売上、順位、データにお金を払っている段階です。あらかじめ予算を確保し、いつ目標を引き締めるのかの日付も決めておきましょう。
- 重要なキーワードでの順位上げ。広告のACoSが目標を超えていてもオーガニック売上が伸びているなら、そのキャンペーンは別のところで元を取っている可能性があります。確認するにはACoSとあわせてTACoSを見てください。
- リピート購入のある商品。繰り返し注文される消耗品なら、初回注文の赤字も正当化できます。ただし、リピート率を推測ではなく実測している場合に限ります。
判断基準はシンプルです。余分な広告費で何を買っているのかを説明でき、いつやめるのかがわかっているか。答えられないなら、それはただの「高いACoS」です。
よくある質問
売上は好調なのに、ACoSが高いのはなぜですか?
広告経由の売上が好調でも、CPCが利益率で支えられる水準を超えている可能性があります。実際に払っているCPCを上限CPCと比べてください。TACoSも確認しましょう。全体の売上が伸びていてTACoSが横ばいか低下しているなら、高めのACoSは許容範囲かもしれません。
ACoSが急に跳ね上がったのはなぜですか?
急上昇が直近の数日だけなら、おそらくアトリビューションの遅れです。それらの日のデータが出そろっても高いままなら、Buy Boxの喪失、在庫の問題、新しい競合、入札額や予算の最近の変更を確認してください。同じチェック項目は広告売上の急減についてのガイドでも順を追って解説しています。
AmazonではACoSが何%を超えると高すぎますか?
損益分岐点を超えるACoSは、意図的にやっている場合を除き、広告経由の注文ごとに赤字を出しています。ほとんどの商品では、確保したい利益の分だけ損益分岐点より低いところに目標を置くべきです。損益分岐点は利益率で決まるので、答えは商品ごとに異なります。
入札額を下げればACoSは下がりますか?
CPCが下がるので、たいていは下がります。ただしマーカスさんのように、プレースメントと販売量も失うおそれがあります。原因がコンバージョン率なら、入札額を下げても問題は解決せず、ビジネスが縮小するだけです。
新商品のACoSが高いのはなぜですか?
新商品はレビューが少なくオーガニックの実績もほとんどないため、成熟した商品ページよりコンバージョン率が低くなります。成熟した競合のコンバージョン率を入札額の計算に使うと、入札しすぎにつながります。自分の実際のコンバージョン率で上限CPCを計算し、最初の数週間は目標を上回るものと考えておきましょう。
高いACoSを下げるにはどのくらいかかりますか?
除外キーワードとプレースメントの変更は、アトリビューション期間が閉じたあと、たいてい1〜2週間以内に結果が現れます。商品ページやレビューの改善は、測定に十分なトラフィックが必要なので、もう少し時間がかかることがあります。どの変更も、評価するまで少なくとも1週間は待ちましょう。
まとめ
では、ACoSが高いのはなぜなのか。その答えは勘ではなく計算で見つけましょう。数字が本物かを確かめ、CPC、コンバージョン率、注文単価に分解し、動いた要素を追っていきます。たいていは、競合の価格、積み重なったプレースメント調整、まったくコンバージョンしない検索用語の一群といった、具体的な原因にたどり着きます。
マーカスさんは最終的に競合に価格を合わせて$23.99まで下げ、入札額を元に戻しました。コンバージョン率は12%に回復し、公式で計算するとACoSは約30%です。以前の24%よりは高いものの、新しい価格での実力値はこの数字です。そこで目標をこれに合わせて設定し直すと、売上も回復しました。この判断ができたのは、原因がわかったからにほかなりません。
目標を決めたら、あとは任せるだけ
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